キリンビールの大瓶を一口飲むと、ふーっと少年時代の故郷が蘇ります。ビールの冷えが弱いとなおさらです。
当時、新興住宅分譲地にあった私の家の周りでは、ところどころで新築住宅の工事が行われていました。当時はのんびりしたもので1棟の建物が完成するには半年から1年くらいかかったものです。
工事現場がひときわ賑わうのが棟上(むねあげ)の日です。一気に建物の骨組みが立ち上がる様子が面白く、よく草むらにしゃがみこんで朝から見物をしました。
作業が一通り終わるとこの日だけはその場で大工さんたちのささやかな祝宴が始まります。
大工さんたちは見ている私に気づくと手招きし、お菓子をくれたり、さらに面白がってビールを飲ませるのです。それで私の味覚に少しヌルめのキリンが刷り込まれました。
この時期はひと月に一回くらい棟上がありましたので、何度もビールを飲まされたように覚えています。
というわけで、私がビールの味を覚えたのはなんと小学校の低学年ということになりますので、我ながらビックリです(笑)。